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餌を求めて
群れを離れた少年は、タラを求めて来る日も来る日も泳ぎ続けた。
時折、サンマやイワシの小さな群れを見つける事があったが、それらは少年のお腹を満たすにはあまりにも少なすぎた。
少年は他の仲間達にも尋ねてみたが、返事は決まっていた。
―こっちが知りたいよ。
少年に負けず劣らず痩せ細った彼らは一様にそう言った。
空腹のまま何日も泳ぎ続けた少年は、やがて自分が何処にいるのかさえ分からなくなっていた。
しかしそれでも、少年は泳ぎ続けた。まるでそうすることによって、大好きなタラにありつけるかのように。
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