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「今まで恥ずかしくて、誰にも話したことないけど…高校生の時にね…」
僕の髪から滴る雫をそっと拭うハンカチから、雨に混じって仄かに彼女の匂いがした。
それが、ひどく心地好くて安心する。
「大人になったら、思いっきり雨に濡れたりすることもないだろうって思ったの。人の目もあるしね」
「まあ…確かに、変な目では見られるな。現に今、身を持って体感してる」
君はクスッと小さく笑った。
ひとつ傘の下、肩を寄せ合い、二人並んで雨の街を歩き出す。
「そう。だからね、雨の中、わざと傘をささずに帰ったことがあるの…。だけど、大人になっても、雨にずぶ濡れになる人もいるのね」
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