一日目

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そりゃあ、杏にだって過去はある。だから俺には分からなかった切ないとかそういう気持ちが分かって当然と言えば当然だった。 それでも、分かるよ、辛いよねって一緒に泣いてる杏を見たらやっぱり気づかないところで俺は杏を傷つけてるのか?って思ったりもした。そう改まって聞けはしなかったけれど。 不意に腹の音が鳴った。 小さなまだかわいい音だったが、それでけっこうな時間の経過を実感する。携帯で確認したら、時刻は11時。 家を出たのは10時頃だから、暫く俺は煮詰まっていたらしい。何だか自分が自分じゃないような気がしてきた。今まで、こんなに一人でボケッとしてたことがあっただろうか。 俺が覚えてないだけで、それなりにはあっただろうが覚えてる中では最高に長い時間放心していた。  
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