一日目

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母さんは小さく呻き、何か欲しいものはないかと聞いてきた。 「今から買い物行くから。今日はあんたの好きな杏仁豆腐買ってあげてもいいよ」 「…マジ?じゃあ、杏仁二個買ってきて」 「二個も食べるの?」 不思議そうな声を出す母さんに俺はハッとした。 「…母さんの分」 「…母さん、プリンの方が好きだな。余計な気まわさなくてもいいよ。それじゃあ、行って来るわね」 「……ああ」 母さんが階段を降りる音に耳を澄ましながら、俺はゆっくりとした動作で額に手をあてた。 部屋の隅に置いてあるコップに雑に入っているスプーン。 赤と青で二つある。 「……そっか」 もう、いらないか。  
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