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「リリン、あの計画の話なんだけど……」
一年中どんな季節でも、変わらず沢山の葉をつけるウィスタの木。
その大きく重い葉に遮られ、ウィスタの森には太陽の光が少ししか差し込まないんだ。
いつも明るいこの世界で、唯一暗い場所。
そこに、リリンの家はあった。
「ミネア、またその話をしに来たのか」
ウィスタの巨樹の根本をくり貫き、彼女はそこに一人で住んでいる。
周囲には他の家なんてなくて、明かりもなくて。
「『夜』を探しに行くなんて、はっきり言って馬鹿らしいんだよ。今時子供だって信じてない。ただのおとぎ話じゃないか!」
この話をしてリリンに怒鳴られるのは、これで何回目だろう。
暗がりではっきりとは見えなかったけれど、その顔は何処か悲しそうだった。
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