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千佳はA定食のボタンを押した。
多分財布を貸せと言ったのは、今日はあたしのおごりで、と言うことだろう。
それで許してもらえるなら安いものだ。
席に着いた後も、千佳は怖い顔をしている。
もうこの空気に耐えられず、あたしは立って頭を下げた。
「千佳、本っっ当にゴメン!あんなつもりじゃなかったの!!!」
大声で言ったから、周りの視線を痛いくらい感じた。
頭を下げたまま、千佳の言葉を待つ。
きっと怒鳴られるんだろうなぁと覚悟していたのに、千佳の反応は意外なものだった。
「ぶっ…くくくく…」
「へ?」
千佳を見ると、笑いをこらえているからか、おもしろい顔になっていた。
「千佳…?」
「アハハハハハ!!もうダメ。おっかしー…」
しまいには涙まで流している千佳。
あたしは訳がわからず千佳を見続けた。
しばらく大笑いした後、千佳は大きく呼吸をして息を整えた。
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