最愛の君へ

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緊張感の全く無いまま2人が話していると、痺れを切らした一匹の魔物が2人に向かって襲いかかった。 バッ… ダンッ… それを合図に、2人は言葉通りにそれぞれ左右に跳ぶ。 周りを囲んでいた魔物も、一斉に襲いかかる。 2人はいつの間にか愛刀を取り出しており、一匹、二匹と、襲いかかる魔物を次々と斬り伏せていった。 舞。 一言で言ってしまえば、2人の闘いはまさにその言葉がぴったりだった。 一緒に戦うのはおそらくこれが初めてであろう筈なのに、2人は既に連携がとれており、あたかも予め動きを決めていたかのような…相手がどう動くか分かっているような…そんな動きをしている。 アクセルが隙を造り、ロクサスが仕留める。 かと思えば、ロクサスに攻撃を仕掛けている魔物をアクセルが仕留め、同時にアクセルに攻撃を仕掛けている魔物をロクサスが仕留める。 まるで、何十年も共に死線をくぐり抜けてきたような… そんな「舞」を、2人は難なくやり抜いてしまったのだ。 鬼才。 それ以外、彼らを表現するに相応しい言葉は、おそらく存在しないのだろう。 ものの数分で、五十はいたであろう魔物を全滅させ、変わりにその中心で背中合わせに凛と立っている2人は、端から見れば鬼に見えたかもしれない。
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