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争いが絶えない世界が嫌になって【月】に隠れたとか。
それはただの伝承のようなものだが、少女は別の理由があるのでは?と思っていた。
ただ何となく。
「さてさて」
栗色のポニーテールに百四十ほどの身長。
華奢であまり膨らみがない胸。
これでも年齢は十六歳だったりするが、まったく見えない。
目は薄いピンク色でまったく輝きがなかった。
「ここに【彼】がいるんだね?どう思う?ミラン?」
少女は門に向かいながら、自分の肩上にいる【そいつ】に聞いた。
――白い蜥蜴【とかげ】である。
どこからどう見ても。
『我に聞くよりもクルミならわかるのではないか?【視覚結界】を使えば』
男――まだ若そうな声が少女の心に語りかけてくる。
少女はそれに驚いた素振りしら見せずに、薄い唇をへの字に曲げた。
「それが出来たら苦労しないって。
人がいっぱいいるし、うまく【気配】を周囲の人間と同じようにしている。地道に探すしかないかも」
『諦めるのか?』
「まさか。
簡単に諦めるくらいなら【仕事】を放り投げてここまで追いかけてこないよー」
少女は唇の両端持ち上げて笑う。
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