エンカウント

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「えっとね、美咲と真琴が補習で、玲子がデートで、沙耶が具合悪くて早退しちゃった」 由紀が申し訳なさそうに阿須香に言った。 『えっ、ちょ……待って。補習とか早退はまだわかるけど、デートってなんだよ』 「玲子、最近彼氏できたみたいだからね~」 『なんじゃそりゃ……完全に舐めてるな。つーか2人で何しろっつーんだよ。まともな練習できないじゃん』 阿須香が肩を落として言った。 ちなみに、由紀と美咲と真琴が阿須香と同じ高校2年で、玲子と沙耶は高校1年だ。 沙耶は病弱なため、スコア係りとして剣道部に所属している。 『まぁ、いいか。2人で出来る練習しようか。とりあえずストレッチして、素振りしよ』 2人は竹刀を用いたストレッチを開始する。 窓の外から、カサカサと枯れ葉が擦れる音が聞こえてくる。 「もう、冬は目の前だね~」 由紀がストレッチを中断し、窓越しに枯れ葉を見つめる。 『……』 それに釣られて阿須香も外に目を向ける。 阿須香と由紀、2人で秋の空を無言で見上げる。
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