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何事もなく毎日が過ぎていた。私とくみは陸上部に正式に入部した。実香子は、その情報収集能力を生かせる報道部に入った。
正直、気が抜けていた。茜のことを自分から言わなければ、そうそう気付かれないと思っていたのだ。事実、私と茜は姉妹だから似てる所もあるが、他人の空似と言われれば納得してしまう程度だ。
ばれずに注目も浴びない学校生活は入学直後の暗鬱な予想とは異なり、充実して楽しい毎日だった。
しかし、そう長くないうちにばれてしまった。
「くみ、要!部活、頑張ってねー!」
実香子が声を掛けてきた。
「実香子も、報道部頑張ってね」
応えてから、いそいそと教室を後にする。くみも実香子に手を振りながらついてくる。
玄関で靴に履き替え、グラウンド前にある部室棟まで走った。
全力疾走だった。
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