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1学年上の姉、村咲茜は完璧な人間だった。
容姿は10人が10人、美人だと答えるほど美しい。艶のある黒髪はどこまでも真っすぐに腰まで伸びて、肌は陶磁器のように白くしみ一つない。二重の瞳は常に輝きを湛え、鼻筋はスッと伸びて、薄い唇は綺麗に色付いている。背は私よりも低いが、それすらも一種の魅力になっている。
勉強は常にトップクラスで教師の人望も厚く、スポーツは助っ人として色んな部活に参加しては数々の大会で名を馳せるほど、万人に平等に優しく、謙虚で、今の時代には珍しい大和撫子のような人だった。
私は、そんな完璧な姉の一年後に生まれた。ただ、姉と違って私は完璧ではなかった。
必然的に完璧な茜は皆から注目される。そして、やたらに私は茜と比べられてきた。もちろん、『完璧な姉』と『出来の悪い妹』として。それを苦に思えないほど私は鈍感ではない。だから、私は茜と比べられることのない、茜のいない高校に行きたかった。
名前を書けば受かるような公立高校に落ちて、茜の通う県内屈指の名門校に受かったのは今年の3月のことだった。両親は大喜びし、茜は「また同じ学校だね」と祝ってくれた。だが、私は……。
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