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「あ!」
私の毎日の日課
大好きなあの人をこっそり眺めること
あ、ストーカーとかじゃないから!
ただ見てるだけって、これも立派なストーカ?
だって見てるだけで、会えるだけでその日一日ハッピーなんだもん
「今日もかっこいいなぁ…」
トントン
不意に肩を叩かれた
心臓が飛び跳ねる
多分、すごい形相で振り返ったんだろうな
「うわっ!」
「なんだ、郁か…」
「何やってんだよ、それにお前の顔怖いぞ」
郁は私の顔を見て「うわっ!」と言った
今の私、あの人に見られなくて良かった…
「なんだっていいでしょ」
私はその場から立ち上がった
郁を無視して、教室へと向かう
「そんなにいいか~」
後ろから気の抜けた声で話しかけてくる
無視!
「絶対、俺の方がかっこよくね?」
私は足を止め振り返る
「は?何バカ言ってんの?」
「バカって、俺は真実言ったまでなんだけど?」
ほんっとこいつってバカ!
自分の事なんにもわかってない!
「誰もあんたのことかっこいいとか思ってないから」
「俺、勉強できるしスポーツできるし完璧じゃん」
そう、郁は完璧
実は顔もいい…
私だって小学生の頃は大好きだった
けど…
「ちびじゃん」
「ちびって言うなよ!」
身長が小さい
小学生の頃は普通の身長だけど、中学生になればちび
全然身長が伸びてないのだ
今だって、私が見下ろしている
絶対自分より小さい彼氏なんて嫌!
「ち~び!」
私はあっかんべーをしてその場から走り去ろうとした
「待てって」
がっちりと郁に腕を掴まれた
振り払おうとしてもびくともしない
「な、なによ…」
いつになく真剣な顔
不覚にもドキっとしてしまった
「俺、お前の事いいなって思ってたんだけど」
「へ、あ、え~!!!」
予想もしてない言葉に驚きを隠せない
この時もすごい顔してたんだろうな
すごく嬉しい
でも…
「私、自分より小さい彼氏なんて嫌だもん」
郁の手から力が抜ける
その瞬間、私は手を払いのけた
私、言葉とは裏腹にドキドキしてた
「で、でも…。私より大きくなったら付き合う!」
なんて身勝手な発言
言った瞬間後悔した…
「まじ!?」
なぜか郁は大喜び
気が抜けてしまった…
「今言ったこと、ぜってーだからな!」
嬉しそうに走り去る郁
私達は中学2年生
男の子の成長期ってすごい
中学を卒業する頃には、郁を見上げる事になっていた…
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