幼なじみ

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「ねぇ、聞いてる?」 彼女は俺に話し掛けてくる。 「聞いてるよ」 ぶっきらぼうに返事をする。 「どう思う?」 彼女は俺に意見を求める。 そんなこと自分で考えろ。 俺に話すな。 どうせ、俺が発言した所で結局自分の意見を通すじゃないか… 心の中で叫ぶ。 決して、彼女には本音は言わない。 「いいんじゃね」 俺の少し不機嫌な声に反応し、彼女が言葉を放つ。 「かずちゃんのバカ、何にもわかってない!」 俺がバカ? そんなこと言われなくてもわかってる。 俺はお前のなんなんだ? 良き相談相手か? もううんざりだ。 「お前は俺に何を求めてるんだ?何で毎回、お前に告白してきた奴の話を聞かなきゃいけないんだよ!」 情けない。 何を怒鳴り散らしている。 男らしくない、潔よくもない。 自分の内に秘めた思いは口にはしない。 俺、お前の事好きなんだよ。 それ、わかってる? 彼女の目にうっすらと涙が溜まる。 「かずちゃんは女心をわかってない。私だって好きで他の男の話してるわけじゃないのに…」 「は?どういう意味だ?」 彼女の言葉の意味がわからない。 女心をわかっていない? お前も男心をわかってないじゃないか! 喉まで出かかった言葉を飲み込む。 「もう、いい!」 彼女は立ち上がり、俺の部屋から立ち去ろうとしている。 無意識に俺の手が彼女の肩を掴み、そのまま後ろから抱きしめる。 「か…ずちゃん?」 彼女が驚き、戸惑いの声を出す。 俺の心臓はドクンドクンと鳴り響く。 自分が彼女を抱きしめている事を、理解するまで時間がかかった。 こんな関係、終わりにしよう。 もう彼女の口から他の男の名前は聞きたくない。 どんな結果になろうとも、今日は心の内を明かす。 次第に心臓の鼓動が速まる。 「美紀…」 彼女の名前を呟き腕に力を込めた瞬間、不意に体が軽くなる。 俺の体は宙に浮き、鈍い痛みが背中にはしる。 「いってぇ…」 彼女は柔道をしている。 彼女は腰を下ろし、投げ飛ばした俺に目線を合わせる。 「ごめん、ドキドキで心臓もたなくて投げちゃった。さっきのかずちゃんの鼓動の意味聞いてもいい…?」 真っ赤な顔の彼女が恥ずかしげに聞いてくる。 俺は頭をかきながら、彼女の問いに応える。 「美紀、前からずっと好きだよ…」
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