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「はぁ……また遅くなっちゃった」
(友香の家って、居心地良すぎで、時間をついつい忘れてしまうんだよね)。
少女は携帯電話の時刻を見る。左手に持つ淡いピンクの携帯を見ると、夜の八時二十分。
「ヤバそう!! この時間だったら、真っ暗だし、はっきり言って夜の住宅街って苦手」
闇夜の住宅街に一人佇む少女。
何か不安を募らせる様に少女の声だけが響いている。
「一人で帰るの嫌だなぁ……」
(大丈夫かなぁー? 確か、ニュースで……)。
「通り魔事件とか増えて、しかも、その犯人捕まってないって……」
白とチェックの清楚な制服が歩調と共に揺れる。
巷で話題になっている事件を彼女は思いだした様だ。
そして、回りを気にするように見渡し、頼りない街灯の夜道に不安の表情は広がって行く。
「大丈夫!! 気にしすぎだ」
彼女は、そんな強がりの一言で、自分に言い聞かせて歩き出した。
「こんな時に限ってなんで誰もメール来ないのー? もうヤダ……誰かしてよ!」
いつも通い馴れてる筈の通学路が、不安と恐怖感が増して行く事で彼女の歩幅が短くなる。
自然と思った事を口に出してしまい、彼女以外に、誰も居ない独り言が、余計に苦しい感覚を感じてる。
更に、暗闇で通り魔が、襲って来る不安と恐怖が彼女の胸を締め付け苦汁の様子。
(私は何故、早く帰らなかったのだろう)。
底知れない恐怖と後悔が押し寄せて、彼女は胸が潰されそうに感じてる。
「うぅ……」
彼女は、口の中が渇き、息をするが上手く出来ない様に、呼吸は荒くなる。異常な程の汗で濡れてる掌をスカートで拭った。
(パパとママに今すぐ会いたい!!)
両親を思い浮かべ、彼女は心の不安を必死で取り除いた。
「でも、もう直ぐ家に着くから大丈夫!」
彼女は、勢いよく角を曲がった瞬間――突然。
「キャッ!!」
静寂に佇む、細長い影が突然に彼女を阻んだ。
恐怖感から、咄嗟の出来事に少女は小さな悲鳴を挙げた。
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