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その細長い影は、少女が、よく見ると黒色のフードコート姿の男性だった。
「……大丈夫ですか?」
悲鳴を上げた少女に、フードコートの男性は、何事も無かったかの様に、声を掛けた。
「い、いえ……」
(ぶつかった訳でも無いのに、男性に声を掛けられた……もしかして、通り魔?)
少女は、恐怖で声が震えて言葉が続かない。
「君は女子高生? 夜は物騒だから、気をつけてないとダメだよ?」
彼女は考える。自分の畏怖が相手に伝わったのだろうか?
フードコートの男性は、深々と被ったフードをから、屈託の無い笑顔を見せて、彼女に優しく話しかけて来た。
その笑顔は彼女の恐怖心や不安を消し去るには十分だった。
「あ、はい。最近事件あったから不安ですよね? って、私ったら、何言ってんだろ。お兄さんには通り魔なんて、関係無いですよね……」
(あぁ、何言ってんだろ。……最初ちょっと怖かったけど、心配して声を掛けてくれたのに。この優しそうなお兄さんの笑顔に、私は少し戸惑いながら、自問自答なんかしたりして恥ずかしいよ)。
少女は、先ほどの不安や恐怖が支配してた事をすっかり忘却の彼方に、消えた様子。
「……そう、狙いどうり女子高生なんだ。じゃあ行こうか?」
まるで、知り合いの異性を自然な振る舞いで誘う男性。だが、その表情は夜の闇により、魅惑的な紳士の様子。
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