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ユウが吐息を荒立てていた。彼は、感じていたのだ。そう…あの感覚を…強く…更に強く。
「感じる…感じるんだ…この感覚…」
「ジッ…こちらファントム2…ターゲットの正面に回った。なんて機体だ!…あれでもM.Aか…まるで化け物だ」
「ジジッ…こちら…エレファント…。合図と共にキャノンを打ち込め!敵機の射程距離が分かるまで近寄りすぎるな!」
「ジッ…こちらファントム2了解」
サンの機体が、部下の機体に指で道路の向こう側に行くように指示を出す。2機程が自走機で、素早く対面へ移った。
「こちらエレファント…キャノン砲撃準備…」
「「了解」」
「弾倉よし!射程2000…、高射角10…、弾道測定…発射準備良し!」
「今だ!発射!」
後方待機していた中距離支援用機のキャノン砲が、一斉に火を吹き幾つもの光の筋が奴目掛けて飛んで行く。
数発のBAP弾が当たり、辺りに炎が飛び散った。
正体不明機が雄叫びをあげるが、その装甲は硬く大したダメージもないようだ。
立花中尉はその異様な光景を目の当たりにし、小さく呟いた。
「…まるで生き物だな…」
突如待機していたユウの脳裏に、ナナの残像が映った。
「うっ…」
一瞬立ち眩むユウ。
「こちらサン!BAP弾ターゲット命中!
…!『アンノウン』攻撃を仕掛けてくる模様です!」
「全機建物の影に非難!」
「「了解」」
正体不明機が全身に光を帯びる。
キャノン搭載機が、急ぎ建物の影に隠れると同時に、敵機から無数の光線が四方に伸びた。
「来るぞ!」
立花が叫ぶ。
「やっ止めろ!」
その時ユウも叫んだ。しかしそれは仲間に対してではなく、フラッシュのように浮かぶナナの残像に対してのものだった。彼女の顔が目の前でちらつく。その彼女が自分の名を呼んだような気がした。
「ユウ…」
八方に放たれた光線は、周りの建物を粉々に破壊。
更に第2分隊の2機及びサーティンの機体を貫通した。
サン軍曹が被害報告を入れる。
「イイとジュウゴ被弾!イイ!ジュウゴ平気か!」
「こちらイイ…機体が損傷し動けない!」
「ジュウゴは?…ジュウゴ!」
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