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ジュウゴからの生存確認の為の通信は入って来なかった…。
「こちらサーティン!被弾した腕が動かない!」
サン軍曹が皆の安否を気遣う。
「他は平気か?」
「こちらトシ!平気です」
「こちらロク!こちらも平気です」
「こちらナインこちらも無事です」
立花中尉機は建物の隅に身を潜めていた。
「こちらエレファント、ジュウロク敵機の右手に廻り攻撃しろ!シルバーフォックスとレインボースワンは、私に着いて来い!なんて火力だ…一撃で3機を破壊するとは…。サーティン、ハチ援護砲撃出来るか?」
「「了解」」
「何とか行けます!」
しかし、立花は気付いた…ユウからの連絡が無いのだ。被弾した訳ではない。何かトラブったのか?そんな心配をしながら、催促の通信を入れる。
「シルバーフォックス!どうした?返事をしろ」
「…」
コクピット内では、更に吐息が荒くなって朦朧とするユウがいた。無線の声すらも彼の耳には届かないようだ。
「…ナ…ナナか…」
心配したジュリーが声をかける。
「ユウ!平気なの?返事をして!」
「名取軍曹!返事をしろ!」
ユウは再三の通信を耳に入れる余裕はなかった。彼の目の前には、ナナの残像がまだ映っている。
「ユウ…久しぶり…」
「ナナ…どうして君が…」
「それは言わないで…いずれ分かる事よ…世の中には理解出来ない矛盾も沢山発生するの…でもあなたはきっと理解してくれる…」
その言葉を最後にナナの残像が次第に薄くなっていった。
「ナナ!待ってくれナナ!」
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