暗躍

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 ユウがゆっくりと瞼を見開き、口をきいた。  「ナナが…ナナが居たんだ…」  新島曹長が近くにより、ユウの様子を上から見下ろした。大きな胸が、ユウの腕にあたるがユウは気にしなかった。しかし、彼女の雰囲気がどこかしら安心感を与えてくれる。  「目覚めたようね…気分はどう?」  ジュリーがそこへ割って入って来る。  「ユウ!」  ジュリーの両手はしっかりとユウの手を握っていた。  「あ…ああ、大分調子がいいです…」  それに新島曹長が続ける。  「無理しないでね。あの状態で無傷で生還できるなんて、奇跡的なんですから…。もう少し休ん時なさい」  「あ…はぁ」  「そうよユウ!機体はもうメチャクチャだったんだから…。神様に感謝しなさい」  そう言う彼女の瞳は潤んでいた。余程彼が気が付いたのが嬉しかったのであろう。  ユウの視線は天井に向けられ、どこともしれない場所を見ていた。彼の脳裏にあの時の記憶が蘇る。  (ナ…ナナが…助けてくれたのか…)  ジュリーの声が次第に大きく耳に入ってくる。  「ユウ…ユウ!中尉を呼んで来るわ」  ジュリーが席を立とうとすると、新島曹長が彼女の肩にポンと手を置いた。  「…頑張りなさい」  彼女は暖かな笑顔でそう言った。なかなか報われない恋に、声援を送ってくれたようだ。  顔を僅かに赤らめたジュリーだったが、それをひた隠すように急ぎ中尉の元に走って行った。
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