81人が本棚に入れています
本棚に追加
ユウがゆっくりと瞼を見開き、口をきいた。
「ナナが…ナナが居たんだ…」
新島曹長が近くにより、ユウの様子を上から見下ろした。大きな胸が、ユウの腕にあたるがユウは気にしなかった。しかし、彼女の雰囲気がどこかしら安心感を与えてくれる。
「目覚めたようね…気分はどう?」
ジュリーがそこへ割って入って来る。
「ユウ!」
ジュリーの両手はしっかりとユウの手を握っていた。
「あ…ああ、大分調子がいいです…」
それに新島曹長が続ける。
「無理しないでね。あの状態で無傷で生還できるなんて、奇跡的なんですから…。もう少し休ん時なさい」
「あ…はぁ」
「そうよユウ!機体はもうメチャクチャだったんだから…。神様に感謝しなさい」
そう言う彼女の瞳は潤んでいた。余程彼が気が付いたのが嬉しかったのであろう。
ユウの視線は天井に向けられ、どこともしれない場所を見ていた。彼の脳裏にあの時の記憶が蘇る。
(ナ…ナナが…助けてくれたのか…)
ジュリーの声が次第に大きく耳に入ってくる。
「ユウ…ユウ!中尉を呼んで来るわ」
ジュリーが席を立とうとすると、新島曹長が彼女の肩にポンと手を置いた。
「…頑張りなさい」
彼女は暖かな笑顔でそう言った。なかなか報われない恋に、声援を送ってくれたようだ。
顔を僅かに赤らめたジュリーだったが、それをひた隠すように急ぎ中尉の元に走って行った。
最初のコメントを投稿しよう!