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立花中尉が横にジュリーを付き添わせて、医務室に入ってきた。すると待ってましたとばかりに新島曹長が、椅子をこちらに向け短いスカートで脚を組ながら、立花中尉の方に振り向いた。
「久しぶりね中尉」
立花中尉はちと困ったような顔で、うつむいた。
「ああそうだな…それよりユウは?」
「あら…私の事より、その若い子のが気になるのかしら」
何故か彼女は、皮肉たっぷりに言った。
「今はそう言う時ではなかろう…。新島曹長」
「ユリでよくてよ…中尉。名取軍曹はもうお目覚めですよ…ほら」
立花中尉はユウの元に近寄った。
この二人の関係には何かありそうだが…。ジュリーは余計な詮索はしまいと思い、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「どうだ…調子は?」
「はっ!大分いいですよ…少し休みましたから…」
「まああまり無理はするな…次回の出撃までは、恐らく時間があるだろう。一週間の休暇を与える。ゆっくり休め…」
中尉の後ろでジュリーが、何やらジェスチャーをしている。どうやら新島曹長と中尉の関係が怪しいと伝えたいらしい。その顔があまりに面白かったのでユウは、思わずその場で吹いてしまった。
「失礼ね!人の顔見て笑うなんて」
「まあそのぐらいの元気があれば平気だとは思うが…」
「中尉あの機体は…」
ユウはやはりあのアンノウンの事が、気になっているようだ。中尉が言葉を遮るように喋った。
「わかってる…今は体を休ませる事だけ考えろ!」
「…イエッサー」
ユウは中尉の意図する所を察したのか、それ以上は何も言わなかった。
「ユリ曹長!後は頼んだ。余計な事は言うなよ」
「はいはい、わかりました」
「はいは一回でいい!」
「了解中尉」
「じゃあな」
そう言うと中尉は、医務室を颯爽と出て行った。その後ろで舌を出す新島曹長。その様子を見たジュリーが、我慢出来なく問いかけた。
「新島曹長は中尉とどんな関係なんですか?」
「そおね…昔の仲の良いお友達って所かしら…」
「あぁ!なんか怪しいですよ」
ジュリーは興味深そうに笑みを浮かべた。
「やっぱり…そう見えるプップ」
「あ~やっぱり」
この後二人の話題は、尽きなかった…。
ユウは二人のやり取りを聞きながら、ベッドから見える窓から遠くを眺めていた。
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