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…3日後
元気になったユウは、一緒に休みを取ったジュリーと共に街に繰り出した。
返還から間もない択捉の街は都会と言うには程遠かったが、クラブやカラオケなどの娯楽施設はそれなりに揃っていたので暇を潰すには不自由は無かった。
ユウとジュリーはクラブで汗をかく。流行りの曲が流れる中、踊りまくる。その中にチラホラと白人達の姿も見えた。ロシア兵だろうか?
そんな事はさておき、嫌な事を忘れるかの如く踊り続けた。
3時間程経つと、踊り疲れたのかユウ達は店を後にした。
「ふ~面白かったねユウ」
「そうだな…。久しぶりに羽を伸ばしたって感じだ」
「次どこ行こうか?」
「まだ行きますか!今日はオールだな…」
こんな時でもユウ達は、基地の側を離れる訳には行かなかった。隊が先日の『アンノウン』がまた現れる事を考慮しての事…、いつスクランブルになるかわからないからだ。
他の隊も駐留してはいるのだが、立花中尉の独断での判断の事だ。
その時、携帯腕時計型電話が鳴り響いた。
ユウがボタンを押すと携帯電話の上に粒子ディスプレイが広がる。電導粒子の粒がひとつのディスプレイを形作るのだ。そこには、立花中尉が映っていた。声は当の本人にしか聞こえないようにセットしてある。
「ナトリ軍曹、休暇の所すまんが、我々第12M.A小隊に出撃命令が下った。直ちに基地に帰還してくれ…」
ユウはいささか不満であった。出撃までは時間がある…、そう言ったのは彼だ。
「我々にですか?他に駐留している隊があるじゃないですか」
「ロシア軍部から直々に我々が、出撃するように頼まれたのだ…」
その時、ユウは直感で感じた…例の『アンノウン』に関しての事だと…。
「もしかしてあの…」
「そうだあの機体だ。ロシア軍部から名指しで、我々を指名したそうだ。他にも誰かいるのか?」
ロシア軍部から名指しで…。通常他国のHQが、個別の小隊を名指しで指名する事など有り得ない。何か裏があるに違いない。少し引っかかる所だったが、アンノウンとなれば話は別だ。彼は是が非でもまた、あの機体に接触したかったのだ。
「はいっ!ローウェル伍長と一緒です」
「二人共、至急基地に帰還してくれ!」
「了解」
ユウは携帯の電源を切った。
「立花中尉から?」
ジュリーが不思議そうにユウの顔を覗き込む。
「ああそうだ」
「なんだって?」
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