81人が本棚に入れています
本棚に追加
ブリーフィングルームでは立花中尉が壇上に上がり、いつものように任務について詳細を語っていた。
「今回の任務は択捉島調査である。斥候隊の話では返還後札幌協定により、ロシア軍に貸し付けてある北東部のロシア軍基地に不穏な動きがあると言う。我々に与えられた任務は、その基地の調査だ。詳しい作戦は現地に着き次第、詳細を話す。直ちに出発準備に移れ!」
「「イエッサー」」
ユウ達は立ち上がると、急ぎハンガーへと向かった。
ジュリーがいつものように、ユウに寄り添いながら語りかけて来た。あの後2人は常に一緒で、何でも打ち明けられる仲になっていた。
「ロシア軍は何を考えてるのかしら?」
「さあな…しかし今回の任務、少し用心した方が良さそうだな」
ユウは何かの不穏な空気を、その今までの経験から来る感で感じていたのだ。
「そうね…用心するに越した事ないわね」
ユウ達がハンガーに着くと、新型M.Aがずらりとそこに並んでいた。
GMA-SLⅡ
四菱重工の第3期モデル。第4期モデルは開発が間に合わなく、大戦後このタイプが軍に配給された。出力は前機の2.5倍。重量も軽量化され、出力、スペック共にグレートアップした機体。ドイツ製のセイバーではあまりの出力の高さに操縦できるパイロットが限られるので、出力を下げ扱い易く作られた機体だ。現在ではNSB-SL045に取って変わってこの機体が主力となっている。
隊編成は立花小隊長を筆頭に、ユウ軍曹が第1分隊長以下パイロット五名他、ナンバーズのサン・カストロ軍曹が第2分隊長以下パイロット六名他となっている。
大戦の生き残りナンバーズに加え、新たに第2世代ナンバーズが四名配属。まだ14歳にも満たない子供達だ。
前と違う所は、隊全体にフェンリルのチーム塗装がしてある所。先の大戦にて『悪鬼の狼隊』として恐れられたフェンリル班のマークを、尊重して付けられた物だ。相手を威嚇する為に塗装されたと思われる。
そんな中、新規配属のメンバーたちを見てジュリーが呟いた。
「しかし、あんな年端もいかない子供達を兵隊に使うなんてどうかしてるわ…軍は…」
「まあ仕方ないさ…。奴らは戦う為だけに生まれたロボットと同じだ。戦う事でしか生きていけないのさ」
ユウのその冷徹なまでの言動に、彼の成長を見たのかジュリーが皮肉りながら言った。
「ユウも言うようになったわね。でも私には理解できないわ」
最初のコメントを投稿しよう!