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「職員室ってどこ?」
「………へ?」
この学校の生徒なのに、彼は職員室を知らないらしい。
普通なら、あり得ない。
どういうことか、と不思議に思いながらも、瀬奈はできるだけ細かくその場所を教えた。
「………そこから、右に曲がってすぐのところが職員室です」
「あ、なるほど………本館にあるんだね」
広すぎる。
これではいつになっても、覚えられそうにない。
歩いて、歩いて、体で覚えるしかないかもな………
そんな思いが、康高の頭に浮かんだ。
「とりあえず、ありがとう西里さん」
「えっ、あ、いいえ!これぐらいお安い御用だよ………?」
急に笑顔を向けられ、必要以上に焦ってしまう。
あのさわやかスマイルは反則だ。
彼のあの笑顔を向けられたら………みんな自分のような反応になるに違いない。
(そういえば…名前………)
「あ、あのっ…!」
「ん?」
立ち去ろうとする少年の背中に声をかける。
康高は、キョトンとした顔で振り返った。
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