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「もう終わり?一球勝負だと暇だね」
ラケットを器用にくるくると回しながら少年が呟く。
コートの反対側には、ガックリと肩を落とす、彼の後輩。
この後輩だってわかってはいたのだ。
自分が男子バドミントン部部長・朱雀翔吾(スザク ショウゴ)に勝てないことぐらい。
例え一球であろうとも、相手が可愛い(朱雀が思っているかは怪しいが)後輩であろうとも、あっという間に叩きのめす。
それが、短いラリーで速攻で決めるか、わざと長引かせて勝負が“決まらない”状況に追い込み倒すかは彼の気分次第だが、どのみち相手が受けるダメージは大きい。
とぼとぼとコートを去る後輩を見ながら、大きなため息を吐く。
つまらない。
どいつもこいつも弱いのだ。
朱雀が望んでいるのは、全身の血が騒ぎだすような強い相手。
それならレギュラーとやれ、という話だが、逆に燃えすぎてしまい気が付けば、一球勝負じゃなくなっている、なんてことになるのだ。
すなわち、部活開始時間になる。
すると決まって顧問に怒られる―――前に“アイツ”から説教をされるのだ。
なるべくそれは避けたい。
いや、なんとしても避けたい。
しかし、面白い勝負がしたい。そんな無限ループな感情を常に朱雀は抱えていた。
多少大げさかもしれないが………。
「部活開始まで後10分…誰かコート入れば?」
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