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「それでさ、うちの部長は―――」
呑気に話しながら二人の生徒がこちらに歩いて来ていた。
そう、それはすなわち、シャトルの進行方向だ。
「………あ」
朱雀が小さく声をもらす。
シャトルは黒髪の少年のすぐそばに迫っていた。
「ん………!」
少年がシャトルの存在に気付く。
それは一瞬の出来事だった。
シャトルが音を立てて宙を舞う。
誰もが唖然としてその光景を眺めていた。
―――その少年と隣の少年を除いて。
「康高ナイス」
「うん、びっくりしたよ、いきなり飛んでくるから」
絶対嘘だろ。
千早は心の中で呟いた。
康高は驚いた、と言うより楽しそうにニコニコしているのだ。
いきなり飛んできた打球を打ち返す反射能力といい、図太い神経といい、本当にとんでもないやつだ。
彼の手には先ほどシャトルを打ち返した、ラケットが握られていた。
「へぇ、彼やるね」
「確かに。てか珍しい、自意識過剰な朱雀ちゃんが他人を誉めるなんて」
「だから君は一言多い」
水戸の余計な一言により、彼は結局朱雀のスマッシュの餌食になったのだった。
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