プロローグ

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3月の終わり。 桜の蕾も膨らみ、開花が近いことがわかる。 空気も気持ちの良い暖かさだ。 春風が駆け抜けるだけで、気分が安らぐ。 陽気な春の日差しの中を、1人の少年が歩いていた。 少年は大きなキャリーバッグを転がし、肩からも長いバッグを掛けていた。 「春だね…」 ポツリと呟き空を見上げた。 見渡すかぎりの青空。 思わず笑みを浮かべ、ゆっくりと歩きだす。 「この角を左だったっけ?」 記憶をたどりながら、歩く。 見たことのある道なのだが、自信がない。 (冬休みに帰って来たんだけどな…) 2・3ヶ月ぶりなのに、どこか違う街並みに困惑する。 しばらくしたら、昔の感覚が戻って来るだろう。 これから、またこの街で生活するのだ。 生まれ育ったこの街で。
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