73人が本棚に入れています
本棚に追加
3月の終わり。
桜の蕾も膨らみ、開花が近いことがわかる。
空気も気持ちの良い暖かさだ。
春風が駆け抜けるだけで、気分が安らぐ。
陽気な春の日差しの中を、1人の少年が歩いていた。
少年は大きなキャリーバッグを転がし、肩からも長いバッグを掛けていた。
「春だね…」
ポツリと呟き空を見上げた。
見渡すかぎりの青空。
思わず笑みを浮かべ、ゆっくりと歩きだす。
「この角を左だったっけ?」
記憶をたどりながら、歩く。
見たことのある道なのだが、自信がない。
(冬休みに帰って来たんだけどな…)
2・3ヶ月ぶりなのに、どこか違う街並みに困惑する。
しばらくしたら、昔の感覚が戻って来るだろう。
これから、またこの街で生活するのだ。
生まれ育ったこの街で。
最初のコメントを投稿しよう!