少年、舞い降りる

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千早が顔を引きつらせながら二人を眺めている中、朱雀が口を開いた。 「そういえば、今日転校生が入部するって聞いてたけど………」 ゆっくりと康高にラケットを向ける。 「それって君のこと?」 周囲が騒つく。 全国レベルの高校に転入そして入部。 それが有名な選手ならまだしも、康高を知るものはいない。 正確に言えば誰も“覚えていない” 目の前でにこやかに笑う少年を周囲は不思議そうに、どこか冷たく眺めていた。 康高が笑顔を崩さず言葉を放つ。 「はい、そうです」 彼らしいあっさりとした返答。 「名前は?」 「江戸、康高です」 「ふーん………知らないな。たぶん」
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