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たぶん知らない。
年下だから、ということもあるかもしれない。
それでも強い選手と言うものは、自然と耳に入ってくるはずだ。
だが、朱雀は江戸康高という名を知らなかった。
顔を見てわからなくとも、名前を聞けばピンとくるかと思った。
しかしやはり記憶にない。
あるのは、知らないという考えと、もう一つ。頭に残る妙な違和感だけ。
知らないはず、なのに感じる不思議な違和感。
朱雀だけでなく、水戸も同じものを感じていた。
まあ、どうでもいいか。
重要なのは、彼が強いか弱いか、それだけだ。
朱雀は康高にシャトルを一つ投げた。
康高が少し不思議そうな顔のまま、それをキャッチする。
「これは………?」
「サーブは君からでいいよ」
話が噛み合っていない。
気にせず、言葉を続ける。
「早くコートに入りなよ。時間がないんだ」
「………!?」
コートに入る。すなわち、試合をするということ。
一東の部長である朱雀翔吾と。
「えーっ、朱雀ちゃんそれ何のいじめ!!?」
部員が騒つくなか水戸が大声をあげる。
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