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「よし、んじゃ決まり」
パンッ、と手を叩きニコニコと笑う。
「あ、朱雀部長、審判は―――」
「僕がするよ」
「え………」
自分がしたかったのに………。
千早が思ったところで、希望が叶うわけがない。
「何か?」
朱雀の睨むような鋭い視線。
千早の中にあるすべての神経が、逆らうな、と彼自身に指示している。
逆らえるはずがない。
権力と実力を持つ朱雀に異義を言えるのは、監督などの一部の人間だけだ。
もちろん、独裁政治状態で部活が成り立っているわけではない。
ただ単純に恐ろしいだけである。
「あ、人吉君」
「ん?」
康高に呼び掛けられ、人吉が顔を上げた。
自分の方を向いた。
それを確認すると、ニコリと微笑み、シャトルを空中に放った。
ふわりときれいな弧を描き、人吉のもとにシャトルが降りてくる。
「サーブ、君からどうぞ」
「んなっ、てめぇ………」
「だって、喧嘩売ったの僕だから。多分」
多分じゃなくて、お前だよ。
という、言葉を千早は飲み込んだ。
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