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さらに目付きを悪くして、人吉が康高を睨み付けた。
なんなんだこいつは。
礼儀とか、遠慮とかわきまえてるのか、それともバカにしているのか、わからない。
そんな彼の視線にまるで気付かないかのように、康高はコートへ歩いていく。
「楽しみだったんだ。高校で試合するの」
小さく微笑みながら話し始める。
「ずっと、千早以外の高校生とは試合してないからさ」
「お前…バドやってたわけじゃないのか?」
「いや………やってたよ、前は」
どこか遠くを眺めるような表情だ。
そこに哀しみすら感じさせる。
「ま、昔のことは置いといて………あ、僕が勝手に話したのか」
先程の哀しみを忘れさせるような笑顔でニッコリ笑う。
そして、一瞬にして変わる目付き。
睨んでいるとは違う。
ただ人吉をまっすぐ見据えているのだ。
だからこそ感じる確かな威圧感。
「さあ、来なよ………!」
スッとラケットが人吉に向けられた。
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