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暖かな春風が少年の黒髪を揺らす。
空に舞い上がった桜の花びらは、地面に桃色のじゅうたんを作り上げていた。
少年はそれを踏みしめ、新たな学校生活に胸を膨らませていく。
「さてさて、まずは職員室かな?」
フッと微笑みを浮かべ、江戸康高は肩のラケットバックを持ち直した。
康高が校舎に入って数分後。
困った事になっていた。
「職員室、どこ?」
彼は別に方向音痴な訳ではない。
校舎が無駄に広いのだ。
以前の高校も、広かったが、それ以上だ。
第一棟だの本館だの、どこになにがあるのか、さっぱりわからない。
さて、どうしたものか………。
キョロキョロと左右を見渡す。
しかし、職員室は見当たらない。
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