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「ボクは……このまま、誰にも知られないまま死んでゆくのが嫌なんだ。」
きっと、とウサギは呟きました。
「群のみんなは、ボクが居なくなったことに気づくかもしれないけど、
そのうち耳が短い目立たないうさぎがいたことなんて忘れてしまうだろう。
このまま此処でボクが死んだら、魂はどこへ行くか分からないけれど、亡骸は残る。
ボクの躰はやがて地面に還るだろう。
腐って分解されてこの草たちの栄養となって、ここには何もなくなっちゃう。
まるで、最初から
『ボク』
という存在なんて居なかったみたいに。
そうして、ボクが此処にいた証は、
ボクが此処に確かに生きていたという証は、どこにも残らないんだ……」
そう言って、ウサギはまた静かに泣くのでした。
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