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2015年 5月1日 午前7時 某県八蔵市──
街は異様な静けさを漂わせ、オレンジ色の朝日を浴びていた。
冷ややかな梅雨前の風が街中を駆け抜ける。
荒れ続ける日本の治安など嘲笑うかのように、この街で犯罪はこの日まで5年間、全く起きなかった。
そんな平和な街でこの日、前代未聞の事態が起こっていた。
原因は2つ。
町中のありとあらゆる信号が機能していない。
点滅すらしない信号機は、ただ静かに佇むだけの飾りと化していた。
そしてもう1つの原因は、各家庭のポストにあった。
八蔵市在住、19歳。大館悠輝(おおだて ゆうき)にとっても例外ではなかった。
青と白のチェック柄のパジャマを着たまま、寝癖全開で悠輝は部屋を出てきた。
冷ややかな朝の空気を浴びて気持ち良さげに背伸びをした。
悠輝は今年に入ってから独り暮らしを始めた大学2年生。
この日、彼は講義の予約を午後から入れていた為、午前中はのんびり過ごすつもりだった。
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