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その日は朝から雨だった。
さすがに車で送ってもらった私は、キリン石に挨拶をしてないせいか、どうも調子がでない。
雨はだんだん激しくなる。
ああ、キリンさん、寒いかな・・・。
単なる石とは分かっている。
けれど、もう・・・。
下校時。
電車から降り、車で迎えに来ていた母に、ちょっと待ってて!と伝えると、後ろ足に跳ねる水しぶきをいとわずに、私はキリン石の所まで走っていった。
緑の葉が雨に打たれて軽やかな音楽を奏でているその根本。
「あったぁ!」
キリンさんは、雨に濡れて黒々と光りながら、そこで待っていてくれた。
私は手をのばした。
どうして今までこうしなかったのか分からない。
こんなに大切な石、もう外に置いておくなんて出来ない。
私はキリン石を手に取ると、宝物を手にしたように、胸に押し当てた。
その時だ。
気配がして振り向くと同時に、男子の声が。
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