29人が本棚に入れています
本棚に追加
私はユウタから石を奪うと、印篭のように突き出し、叫んだ。
「キリン!キリン!私が挨拶してたのはキリン!あんたと同じにしないで!」
「あ、やっぱり挨拶してたんだ。同じだ。」
ユウタは嬉しそうに笑っている。
これでは拉致があかない。
「もういい!このキリンは私が持って帰る!」
すると、少し間があった。
見ると、ユウタは真面目な顔。
「待って。」
「な、何よ。」
「お前が持って帰ると、俺、挨拶できなくなるだろ?・・・なんつうか、コイツに挨拶しないと、調子出ないんだよな。・・・時々でいいから、貸してくれないか?」
・・・挨拶しないと調子出ないなんて、私と同じ。
ユウタも、この石の虜になってるんだ。
私は少し楽しくなってきた。
「なら、毎日交換しあうってのはどう?」
その言葉を聞き、ユウタも笑う。
「いいね!交換石か!」
そうして、二人で笑った。
雲が流れて、光が、ちょうど、私達を射した。
眩しい中、私は石をそっと握り締めて、心の中で呟いた。
やっぱり、不思議な石。
ありがとう、キリンチン○石。
最初のコメントを投稿しよう!