403人が本棚に入れています
本棚に追加
「まぁ今日は俺も急に誘ったし。悪かったよ」
さわやかに、好印象にさらりと言ってのける男に、一稀には孝志がモテる理由がわかった気がした。
「いや、俺も付き合い悪くて…ごめん」
言うと、孝志は一稀の肩にポンと手を置きまた笑った。
「いいよ。もうすぐ愛美(マナミ)ちゃんの誕生日だろ?」
「あぁ」
愛美、とは一稀の妹だ。
中学校に上がった最愛の妹に、一稀は今年腕時計を贈ろうと思っている。
「プレゼントもいいけど、無理すんなよ」
「…ありがと」
孝志の優しげな眼差しに、一稀も思わず綻んだ。
孝志は中学からの付き合いで、親友とも言える間柄だ。
昔一稀が一番辛かったとき、ずっとそばにいてくれたのが孝志で。
それから孝志はずっと一稀を気にかけてくれていた。
友達付き合いの悪い一稀を遊びやサークルに誘ったり、相談に乗ってくれたり。
本当に、感謝している。
「…なに?」
じっと見ていたのに気づいたのか、孝志が訝るように覗きこんできた。
「いや、イケメンだなと思って」
「だろ」
「やっぱうそ」
「ちょ、ひでーっ」
そうして笑い合ったあと孝志と別れ、一稀はバイト先であるファミレスへと急いだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!