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「…知りません」
絞り出すような一稀の反応が相手を楽しませたのか。
男達の笑いはより濃くなる。
まるでイジメを楽しむ子どものような表情に、一稀は嫌悪した。
「いやぁ…知ってるでしょ?」
「知りません」
知らない…知らない。
頑なに否定する。
握りしめた手からは完全に血の気が失せていた。
「でも芝原さんの方はご存知みたいなんですけどぉ」
「……」
間延びしたような声は、地なのか、一稀を挑発しているのか。
掛けられる声を無視して一稀は歩きだした。
これ以上連中と話したくもない。
「…また来ますよ、菅野谷さん」
背中に向けられた嘲笑うような声に、一稀は体をビクリと震わせ…。
知らない。
知らない。
…関係ない。
逃げるように、一稀は公園を立ち去った。
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