可能性、二割。

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ガタッ、と物置のドアを開けると、 正直、なかなか見慣れない世界が広がっていた。  「ほっほっほー……なかなか、だね……(笑)」 誰にも聞こえないように、静かに溜め息をついた。その直後。  「……おっ?」  「?!」 溜め息聞かれた?!ヤバいっ……!! 仕事の初っ端から怒られる……?!  「真穂路?真穂路ちゃうん?」  「へっ?」 あぁ、溜め息バレてなくてよかった……。 でも誰だろ。正直知らない……どうしよ……。 何か手に持ってはらへんかな、あわよくばその持ち物に名前とか! ……あ、持ってはる上履きに名前が。……えーと、“山藤(ヤマフジ)”? 多分、名字は山藤。山藤さん、か……。  「おーい和輝(カズキ)。早よ練習行け。もう始まってまうやろ」 誰かが山藤さんの頭にチョップを入れた。  「痛っ?!何やねんもー……あ、」  「あっ」  「輔人」  「兄貴」  「なんや真穂路、お前来てたん?」 来た……。 これが我が兄貴、原井輔人(ハライタスト)。 透斉高校ラグビー部主将。 ……しかしうちの親は、 どうしてこうも変わった名前が好きなんだろうか。 “マホロ”とか“タスト”とか……。 まぁ今はいいや。  「和輝、こいつ」  「お前の妹やろ?知ってる。マネージャーやってな? 俺、山藤和輝(ヤマフジカズキ)。よろしく♪」  「は、はいっ!」 山藤さんはすっごく明るく自己紹介して下さった。 少し肩の力が抜けた気がした。
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