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「じゃ、練習行くわ」
山藤さんは少し手を上げて、
グラウンドへ駆けて行った。
何ていい人なんだろ。明るくて、優しそうで……。
「頑張れよ、バーカ」
「って!!」
兄貴に頭を小突かれた。あの野郎、覚えてろよ。
とりあえずまぁ、この物置片付けよ……。
実を言うと、あたしは入学前にマネージャーの先輩から、ちょっとは仕事を聞いた。
物置の整理、水汲み、ジャージチェック、麦茶作り……。
正直言うと意外と多い。まぁ頑張ろう。うん。
見たところ、一年の男子は自己紹介中だった。
……ダメだ、見てたらちょっと羨ましくなる。
思わず目を逸らして、物置の整理を再開した。
ゴミを分別して、ビブス(ノンスリーブのユニフォームみたいなもの)を畳んで、テーピング用テープの整理して……。
あと、「今日は水汲みいいよ」とは言われたものの、
ちょっとは水分補給用の水が気になる……大丈夫かな……。
……とか考えながら整理してたら、
先輩や同い年のみんながこっちに帰ってきた。
何人かの先輩は「あ、真穂路」とか、「真穂路やん。よっ」と声をかけてもらいながら、通って行ってくれた。
……待て待て待て待て、あたし誰一人名前知らないぞ。
心の中で叫んでいたその時。あたしにも分かる人が現れた。
「……あ、真穂路。よっ」
「あっ、裕吾(ユウゴ)」
久々に会った気がする。隣のクラスの崎田裕吾(サキタユウゴ)。
あたしは彼と知り合いだ 。
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