可能性、二割。

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数秒考えて、フッと思い出した。 「……あ、そーだ」 自分が整理したばかりの物置にもう一度入り、 小さな箱からマジックペンを数本取り出して、 隣の物置に入り、ボールをあさった。 山積みの楕円球の中から、 ペンで書かれた“透斉”の字が薄れたものを何個か取った。 「さ、書こっと」 ペンのキャップを取って、 キュッキュッと薄れた字をなぞっていった。 「やっぱ先輩の字はキレイだなー……」 マネージャーの先輩、安岐成海(アキナルミ)先輩。 マネージャーとしても、透斉高校生徒としても、すごい人。 まさにあたしの憧れ。 マネージャーの仕事がテキパキ出来て、 在学してた時は透斉高校進学コースだった。 うちの高校、透斉高校の進学コースは、 地域ではなかなかレベルが高いことで有名だ。 ちなみにあたしは普通科。それでも精一杯である。 「はぁー……」 “溜め息を吐くと幸せが逃げる” という言い伝えを思い出して、慌てて空気を吸い込んだ。 何だかんだ考えながら、一応手は動かし続けた。 ひたすら字をなぞり続けていると、 頭上に気配を感じて、一旦手を止め、顔を上げた。
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