長い長い夜の季節

4/6
68人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
   洗濯を終えて、食堂の前を通る。普通の日は、男客ばかりが目立つ。      「フリノフの奥さん、こんにちは。相変わらず、お美しい。娘さん達も、飛び切りの美少女だなぁ。どうだい、お茶でもご馳走するよ」       雑貨屋のオヤジさんは、一家に軽く声を掛けた。      「お茶!素敵だわ!」   ラリサは、そう言うと、食堂の方へ行こうとした。      「ヤンさん、元気そうで……私達、これから洗濯干しが忙しくて。失礼しますね」       ラリサは母親に腕を捕まれ、帰りの道を小言を言われながら歩いた。      「おじさん、親切に言ってくれたのに……」      「ラリサ、若い娘が大勢の男達の前に行っては駄目よ!気をつけなさい」     母親は、ハァとため息を吐く。      「はーい、気をつけるよ」       しょんぼりと返事をした。      「母さん、ラリサも反省してるし、もういいじゃない」    「タチアナお姉ちゃん」     優しく微笑む姉に、ラリサは、いつも天使か女神は、こんな感じなんだろうなと思う。     流れる様な金髪に綺麗なすみれ色の瞳。(私も金髪だけど、お姉ちゃんみたいに見えたらいいのになぁ)        
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!