珍事件発生

3/11
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
けだるげな表情の彼は、かったるそうに右手を後頭部に据えたまま何歩か歩を進め、かと思うと唐突にあくびを漏らす。 察するに、彼もここの組織員だろう。 形のいい唇と、端整な顔立ちによく映える深緑の瞳。 手元で揺れる炎のように鮮やかな赤い髪は、水分をたっぷり含み、ほかほかと湯気をたてている。 どうやら風呂上がりらしい。 毛先からひっきりなしに滴る雫を、首元のタオルで熱心に拭う姿が何よりの証拠だ。 そんな青年から少し離れた所では、さらに十代後半くらいの少年二人が、それぞれ好みの場所に陣取って思い思いの作業に没頭している。 一方は熱心に、また一方は淡々と。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!