戴冠の儀

25/30
3939人が本棚に入れています
本棚に追加
/727ページ
「お待たせいたしました」 ノアルが待つ部屋の扉をシルバは叩く。 そして中から「どうぞ」と声が聞こえると、侍女が扉をゆっくりと開けた。 「いよいよこの日が来ましたね」 シルバの姿を見たノアルは、立ち上がりながら出迎えた。 「これからが私の戦いです。もう後戻りは出来ません」 「デルララの人々も、シルバ様の祝福の為に来られていますよ」 ノアルは優しく微笑んだ。 「ミランの姿が見当たらないようですが」 今日はミランの顔を見ていない。 ノアルと一緒に居ると思っていたシルバはそう言った。 「仕事の引き継ぎが長引いていると聞いています」 立ち上がりながらシルバを迎え入れたノアルは、そう言いながら微笑んでいた。 ノアルのその表情を見ると、不思議と落ち着く。 それが巫女だからなのか、それともノアル本人が持つ温もりなのかは分からない。 おそらく、その両方なのだろう。 シルバはノアルに微笑み返すと、2人はお互いの手を握り合った。
/727ページ

最初のコメントを投稿しよう!