戴冠の儀

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-- デルララで戴冠の儀が始まろうとしていた頃、ペルワンの首都では、フリックがルルアの話を始めようとしていた。 フリックの前には、ライラとイシュ、カチュアとペリュが腰を下ろしている。 「これから話す事は他言無用だ。改めて人に話すような事ではないからな」 フリックの言葉に、それぞれが頷いていた。 「数年前、グラン王国は壊滅的な被害を出した疫病が発生した。それは、グラン王国全体に広がりを見せ、当然のように王族にも病人が出た」 フリックは4人の視線を感じながら、淡々と話し始めた。 それは王国の崩壊から始まり、国王の暴走へと変わっていく。 フリックは、カチュアとペリュに分かりやすく言葉を選んでいた。 砂漠で暮らしていた2人には、縁のない話なのだ。 「疫病の広がりは早くてな。俺達も自分の身を守る事で精一杯だったのさ」 この辺りの事は、グラン王国に暮らすライラとイシュなら分かっている。 特にイシュは、王国内を旅する薬士として生きていたのだ。 地方の事なら、誰よりも詳しいかもしれない。 だがイシュの聞きたい事は、その事ではないのだ。
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