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暗い闇の中、彼女は膝を抱えて丸まっていた。どうしてここに居るのか解らなくて、考えようとしたけどとても眠くて、すぐにどうでもよくなった。
カツン―――という音が響いた後、不思議と眠気は去ったけど、
こんどは、静寂が支配する闇が怖くて、蹲った。
それでも、このままではいけないと思い、顔を上げて歩き出す。
どれだけ歩いただろう…
そろそろ疲れてきて、休憩しようかと思ったとき
「やぁ、どうしたの?
こんな“闇”が支配する空間で」
柔らかい子供の声を聞いた。
いつ現れたのか、目の前に一人の十二、三歳くらいの少年が立っていた。
長い銀色の髪に緑色の瞳。神官の衣装である、深緑の線の入ったローブを着た少年。
「お姉さん、ここが何処だか解ってる?」
彼女は少し考えてから答える。
「…夢?」
「そう。じゃあ、誰の創った夢だかは解る?」
王立魔導師に、筋が良い。と誉められた事もある彼女は、すぐに、ここが精霊の創った闇の結界の中だと気づいた。
「って、結界の中じゃどんなに歩いたって無駄じゃない!」
結界は中から壊し、逃げ出すのは至難の業だと言う。
彼女の様に二、三年魔術をかじった程度の俄魔術師などには、到底壊す事など出来る訳が無い。
しかし、外からなら簡単に壊せる。
隠れた精霊を探し出し、説得。結界解除を頼めば良い。
それを断られても、殺せば結界だけは解かれる。
まあ、その場合、結界内に捕らわれている人は永遠に目覚めない可能性が極めて高いのだが。
そんな訳で、彼女は歩くのを止めて、その場に座り込んだ。
「ところで、あなた…何?」
「何って?」
「あなたは、精霊?それとも人間?」
「どっちだと思う?」
「もおっ。判らないから聴いているんじゃないの!」
膨れっ面になる少女と、それを見て笑う少年。
それでも、はぐらかさずに答えてくれた。
「ボクは、どっちでも無いよ。
精霊でも、人間でも--魔族でも無い。…どっち付かずの蝙蝠さ」
と、少し寂しそうに。
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