第一章 出会い

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アンゼルは改めて本当の事を話し、ビルフォードに城に同行する事を求めた。 「…アルが行くなら行く。」 アンゼルはアルファードを見る。 アルファードは、ハァっとため息をしてから 「…王命でしたら仕方ありません。」 「じゃあ。」 「えぇ。一緒に行かせて頂きます。」 手ぶらで三人は歩きだす。 「本当に…何も持って行く物は無かったのか?」 アンゼルが、たまらず聞いた。 なんと、ビルフォードは手ぶらだった。 荷物を持っているのはアルファードだけ。それも、小さいバックだ。 あんな小さなバックに薬が入ってるとも思えない。 ビルフォードが歩きながら振り返る。 「だって、要らないじゃん。ここに名医が居るんだから。」 「…は?」 「オレの売ってる薬は全部アルが調合した物だ。 そして、アルは医者でもある。」 「…アルファード君は一体いくつ副業を持っているんだ。」 「えーと…最低でも三つ以上は。 それと、ボクの事は呼び捨てにして下さい。」 「…。」 絶句。 これといって寄り道もせずに、アンゼル達はカルサア城に着いた。 しばらくここで待っていてくれ、と言われて連れてこられたのは 王国戦士団、兵士隊の宿舎だった。 「着替えてくるから、しばらく待っていてくれ。」 と言ってビルフォードとアルファードを客間(と言う名の物置)に残し、ドアを閉めた。 数分後、待たせたな、と言いながら入って来た男が一人。 前髪を後ろに固め、礼服を身に着けた、つり目の男。 「ん? どうした二人揃ってほうけた顔して。」 その声は確かにアンゼルの物。だが、顔が合わない。 先程まで自分達といた彼は、つり目ではなくこんな殺伐とした気配を漂わせていなかった。 例えるなら、暖かな春からとても寒い冬に、いきなり変わった様な感じだ。 「………」 「………」 アンゼルは眉を少しつり上げて 「…そんなに、違っているか?…顔。」 自覚はあるらしい。 「…うん。」 「それはもう、 天と地位いには。」 とどめのアルファードの言葉。 「………………」 アンゼルはしばらく無言のまま固まっていた。
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