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「百合子-!? 早くしないと遅刻するわよ-!」
一階の階段下から、声を掛けてくる母親の声が聴こえて来た。
百合子は、はっと我に返った。
「今、行くからー!」
と、答えながら、階下へ向かった。
「ほらほら、早くしないと」
そう急かす母親へ……ちょっと、うっとおしいと思う自分に気がついた。
父親の急な転勤でここへ移って来てから、三ヶ月が過ぎた。
訳ありの転勤だが、彼女はさの理由を知らない。
百合子が食卓のテーブルに着くと。
父親が真っ先に百合子へいう言葉は、朝の挨拶ではなく、質問だった。
「百合子。昨日変わった事はあったか?」
父親は無表情でそう聞いてくる。
「何も無いけど…」
「そうか、それならば良い」
毎朝、このやり取りが繰り返される。
同じ、セリフ。
父親はそれだけしか喋らない。
百合子も同じだった。
朝食を食べ終わると、逃げるように家をでて学校へと行く。
「行ってきます!」
百合子はいつから父親と、ちゃんとした会話をしなくなかったのかとふっと思った。
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