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 その頃。百合子と洋子は、バスの涼しい空気にあたっていた。 洋子は百合子へ呟いた。 「遅刻しちゃうね?」 「うん。でもまだ間に合うよ」 百合子は、ちらりと腕時計を見て見ると。 ( やっぱり、遅刻かなぁ? ) 遅刻なんてこっちへ転校して来てから初めての事になる。 今日は朝の儀式が、いつもより時間がかかったせいだ。 遅刻をしたなんて、パパが知ったら怒るよね。気をつけないと、彼女は反省した。 洋子は、相変わらず、百合子に話しかけている。 この街の南高校に転校した来た初日に一番に話しかけてくれたのは、洋子だった。 人なっこい、良い子だなぁ、と最初に印象を覚えた。 それは、今でも変わらない。 実際。家が近い方なので、良くバス停で会うので。 たまに、一緒に登校したりしている。 百合子は、少し前迄は私も彼女と同じぐらい明るかったのに、とふっとそんな事を脳裏に思った。 ダメダメ!! 私はやり直すと決めたんだ、昔のようには ……もう……。 百合子は心の中で、自問自答を繰り返ししながら。 自分の視線が、自然と彼女へ向いていたらしい。 洋子は百合子が余りにも、自分を見つめているので、 「ねぇ。さっきから私の顔をずっと見ているけど、何かついてる?」と訊いた。 そう訊かれた百合子はどっきっとして慌てて、 「ううん。別に何も……」 と答えた。 「ふーん。何か、イヤな感じぃ-」 と、洋子は顔を歪めて言った。 百合子は、いけない、と思って思わず彼女に。 「井上さんって、可愛いなぁと思って見とれてた」 そう答えた。 でも洋子は普通の子より、可愛い方の分類に入ることは確かだった。 百合子の言葉を聞いて、洋子は素直に、 「えっ!? ほんとうに、お世辞じゃ無くて?」 と、嬉しそうに百合子へもう一度、訊いてきた。 百合子は正直に、 「うん。本当に」 と言うと。彼女は感激を隠しきれない反応をして、礼を言った。 「ありがとう!」と。    
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