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バスを降りたとたんに、夏の空気が百合子達にまとわりついてきた。
二人は急いで学校へ向かった。
「ねー、間に合うかな?」
と、洋子は百合子と走りながら訊いていた。
「分からない ……ぎりぎりかも知れない……」
百合子は息を切らしながら答えた。
汗が、頬をつたって地面へ雫となって落ちて行った。
学校の校門が開いているのを見て、間に合うと期待している自分に気付く。
だがその期待は校門に立っている二人の風紀委員に打ち砕かられた。
「はい! 二人共遅刻!!」
百合子と洋子は全力疾走で、ゼイゼイと息を切らし、洋子はその場に座り込んでしまった。
風紀委員は二人共3年生の女子だった。
ひとりはショートカット。
もうひとりはロングヘアーだった。
ショートカットの女子が洋子に気付き、
「また!! あなたなの? 井上さん!? いい加減に遅刻するの止めなさいよ!!」
と、怒鳴り始めた。
百合子は咄嗟に、
「すみません!」
と、謝ると、ショートカットの女子は
「月丘さんが遅刻するなんて。一度もなかったはずよね? どうかしたの?」
と質問を投げかけてきた。
「朝の仕度に時間がかかってしまいました」
百合子がそう答えたが彼女は余り気にしてはいないみたいだった。なぜなら標的は洋子だったからだ。
「そう。それより井上さん!! スカート短くし過ぎ! いい加減に直して来てくれない!? 少しは月丘さんを見習ったら?」
そう言われて。洋子は少しむっとして。
「はいはい。どうもすみませんでした!」
「何! その言い方!?」
もう2人共喧嘩腰になっている。
「もう、そのぐらいにしたら?」
と、今までずっと口出しをしなかったロングヘアーの女子が、困った顔つきでに言ってくれたお陰。
「分かってる。2人共行って良いわ」
「有り難うございます」
百合子は礼を言った。が、
洋子は顔を背けて無言のままだった。
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