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「う~ん…」
細く開かれた目に映ったのは、見慣れた風景だった。
あれ…
これ、帰り道…?
歩いてる…
でも俺の手足に力は入ってない…
まだ脳が起きてなかったから、理解するのに時間がかかった。
そしてふと、体の前面に人のぬくもりを感じて、改めて今の状況を知った。
「気が付いたかよ?」
この声は…!
「間宮?!」
そう、俺は間宮に、おんぶされていた。
「な、なんっ…え、まさか、学校からずっと…?!」
「センセーは車で送ってくって言ってたんだけどよ。おれ、おまえに聞きたい事あったし、おぶって行こーと思って。」
いくら俺がヤセ気味な体型だからって、身長は間宮と同じ位あるのに。
いくら間宮が水泳部でガッチリしてて力があるからって、学校からウチまで徒歩50分はかかるのに。
そこまでして俺に聞きたい事…
そりゃもちろん、ナオの事…
でも、どんな内容にせよ、今度は怯むもんか。
テストはヤバイかもしんない。
もしかしたら賭けは俺の負けかもしんない。
だけど、そんな事で壊れちゃう程俺とナオの関係は脆くない!
それだけは、ちゃんと伝えよう。
「なあ、羽村。」
い、いきなりきた。
「なんだよ…」
内心ドキドキドキドキ…
「道、わかんねえ」
……………。
一瞬の沈黙ってのは、案外長く感じるんだと知った。
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