~第1章~

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  貧相な食事を済ませ、一服する。     リンゴは結局そのまま食べずに食卓に置いた。     「ぐぉ…ぐぉおぉぉ…っ…ふしゅー…。」     どうやら妻はそのまま寝入ってしまったようだ。     「やれやれ…食べては寝て…寝ては食べて。やりたいように生きてるおまえは勝ち組だよ…。 はぁ…。」     妻に毛布をかける。     この妻ときたら…好きな時に寝て、食べて、暇があったら近所の奥方達と井戸端会議をしては遊んで…     週末にはどぎつい化粧に、鼻が曲がりそうな強烈な臭いの香水を付けては会食に出かける。     態度もデカけりゃ身体もデカい。体重なんて、ゆうに自分を超えるだろう。     自分はいったいこの妻のどこに惹かれて結婚したのだろうか…。     「はぁ…今日も疲れた。 明日は大事な外商もあるし…もう寝よう…。」     寝室に入り、ネクタイを外し、ベッドにばったりと倒れる。     「またいつもの一日が始まる…か…。」     自分はいつしかそのまま眠りについていた…。           ……食卓の中央にはポツリと『真っ赤なリンゴ』が…ただ静かに座っていた………      
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